損害賠償を請求するために実損の発生は必要か
我が国の損害賠償制度は、現実に損害が発生しなければ賠償する必要はないという基本的な考え方を採用しているといわれています。
すなわち、国によっては、現実の損害が発生していなくても、賠償額をごく低い金額(例えば1円)とするなどして賠償を命ずるという制度(名目的損害賠償と呼ばれます。
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)や、損害を与えた行為の悪性を強く非難し、行為者を懲らしめ、今後そのような行為がされることがないようにする一罰百戒の趣旨も込めて、実際に生じた損害よりはるかに高額の賠償を被害者にするよう命ずるという制度(懲罰的損害賠償と呼ばれます。
)などが認められている国もありますが、我が国においては、そのような制度は少なくとも明示的には採用されていないのです。
もっとも、我が国においても、賠償されるべきとされる損害の中には、例えば交通事故で大破した車両の修理費用や負傷した人の治療費などの、目に見え、額の算定も容易である損害にとどまらず、精神的損害のような、目に見えない損害も含まれるとされていますし、法人である被害者のように、精神的損害が想定できない場合であっても、信用の毀損などの無形の損害の賠償を求めることができるとされています。
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そして、このような無形の損害の賠償額の算定に当たっては、損害を発生させた違法な行為の悪性の程度なども重要な要素として考慮されることになります。したがって、名目的損害賠償や懲罰的損害賠償の発想と共通する考え方は、我が国の損害賠償制度においても一定程度は見られるということができます。
そして、このような無形の損害の額をどの程度に評価するかについては、事例の集積によって自ずから一定の相場が形成されているといえ、特に交通事故訴訟などの件数の多い訴訟においては、例えば後遺障害による慰謝料額は、その後遺障害の程度が自賠法施行令の後遺障害等級のどれに当たるかによって、目安となる額があらかじめ決まっているといってよい状況にあります。
